他業種からの参入
不動産業者が、残置物を買い取る。片付け費用が、交渉の材料になります。
空き家や相続物件の売却で、必ず出るのが残置物です。処分費は売主の負担になり、それが理由で話が止まることもあります。その中に値段がつく物が混ざっています。買い取れると、片付け費用が下がり、交渉の材料が増えます。
安場 達也古物査定の窓口 代表
買取業界歴15年以上。査定の現場から店舗の管理者、そして経営者まで、同じ道を順番に通ってきました。
北海道から沖縄まで、開業と店舗運営の支援実績があります。
大阪府公安委員会 古物商許可 第62229R076686号
公開 2026年9月8日
更新 2026年10月8日
この記事は業者向けです。
不動産の売買仲介、空き家の管理、賃貸の原状回復に関わる事業者に向けて書いています。

佐藤さん(開業を検討中)不動産屋が空き家の残置物を買い取るのって、アリなんですか?
先に結論安場さん
- 不動産業者も古物商許可を取れば、残置物を買い取れます。
この記事の例では、買い取った7万円分を差し引いて、売主の片付け負担が22万円から12万円に下がりました
- 残置物の処分費は10万円から30万円。
売主にとっては大きな負担です
- 買い取れるとその費用を下げられます。
値引きではないので粗利は減りません
- 相続物件は相続人が遠方にいることが多く、任せられる相手を探しておられます
- 必要なのは古物商許可だけ。
宅建業免許とは別の許可です
残置物が成約を止める理由
残置物が成約を止めるのは、売主が遠方にいる・費用を先に出したくない・捨てていいか分からない・誰に頼めばいいか分からない、の4つが重なるからです。
空き家や相続物件を扱っていると、必ず家の中が、そのまま残っている場面が来ます。
売主に片付けをお願いすると、返ってくる答えは大体この4つです。
遠方に住んでいる
相続で受け継いだ実家。
片付けのために何度も帰れません。
業者を探して、立ち会って、指示を出す。
この手間が理由で、話が止まります。
費用を出したくない
処分費に10万円から30万円。
売れるかどうか分からない段階で、先に出すのは抵抗があります。
売却代金から引ければ、という話になりがちです。
捨てていいか分からない
これがいちばん多い理由です。
親の遺品の中に、価値のあるものが混ざっていないか。
判断できないから、手が止まります。
誰に頼めばいいか分からない
片付け業者の相場も、良し悪しも分からない。
だから、いま話をしている不動産業者に聞かれます。
ここでこちらが答えを持っているかどうかです。

3つ目に答えられるのは、査定ができる人だけです
片付け業者を紹介しても、捨てていいか分からないという不安は解消されません。
むしろ「知らない業者に全部持っていかれるのでは」と心配が増えます。
値段がつくものは見て、お伝えしますと言えるかどうかで、話の進み方が変わります。
買い取ると数字がどう動くか
値段がつく品を買い取ると、その額を処分費から差し引けるので、売主の負担が下がります。
戸建ての残置物を例に置きます。
買取をしない場合金額
残置物の処分費220,000円
売主の負担220,000円
買取をする場合金額
残置物の処分費190,000円
買い取った分を差し引く−70,000円
売主の負担120,000円
売主の負担が10万円下がりました。
それでいて、こちらの粗利は減っていません。
買い取った品を売れば、買値との差額が利益として乗るからです。
そして、この10万円には別の意味もあります。

価格交渉のときに、使える材料になります
あと10万円下げてほしい、という買主の要望。
売主が動けないとき、片付け費用のほうを圧縮できます。
売却価格を下げずに、売主の手取りを合わせにいく。
これは、残置物に値段をつけられる業者だけができる調整です。
相続物件で、特に効く
相続物件で買取が特に効くのは、相続人が複数で遠方にいることが多く、誰が何をいくらで処分したかの記録が求められるからです。
相続で発生する物件には、共通した条件があります。
- 相続人が複数いる。
誰かが独断で捨てると、あとで問題になります
- 相続人が遠方にいる。
現地に何度も来られません
- 故人の持ち物が手つかずで残っている。
触りにくく、後回しにされます
- 金額の記録が求められる。
誰がいくらで何を処分したかを説明する必要が出ます
4つ目は見落とされがちですが、実務では重要です。
買取をすれば、品名と金額が書面に残ります。
古物営業法で記録が義務づけられているからです(1万円未満の取引は免除されますが、書籍・ゲームソフト・CD・DVD・バイクの部品などは1万円未満でも記録が要ります)。
「勝手に処分された」という疑いが生まれにくくなる。
相続人が複数いる案件ほど、この記録が効きます。
何を、いくらで買ったか。
記録が残ることが、相続人にとっての安心になります。
必要な許可と、線引き
宅建業免許とは別に、古物商許可が必要です。
手数料19,000円、審査に約40日。
試験はありません。
そのうえで、同じ現場から出るものの扱いを分けます。
買い取るもの
古物商許可で買い受けます。
持ち主にお金を払って買うので、
この時点で廃棄物ではなく商品です。
本人確認と、古物台帳への記録が必要になります。
処分するもの
家庭から出る家具や家電は一般廃棄物です。
自治体の許可を持つ業者に依頼します。
古物商許可では処分できません。
いまの委託先は、そのまま使います。
お客様の家で買い取る場合、訪問購入にあたります
特定商取引法の規制がかかり、契約書面の交付が必要です。
さらに、転売は禁止ではありませんが、8日以内に手放すと通知の手間と、解除されたときに取り戻せない危険があります。
8日間は手元に置くほうが安全なため、資金の面でこの期間を見ておいてください。
なお家具と家電(持ち運びが簡単なものを除く)は訪問購入の対象外ですが、
貴金属やブランド品は対象です。
何から始めるか
始める順番は、古物商許可の申請、貴金属だけから始める、売り先を決める、媒介の提案に一行足す、の4つです。
-
古物商許可を申請する
管轄の警察署へ。
法人で取る場合は役員全員分の書類が要ります。
本籍地から取り寄せるものがあるため、ここが一番時間を食います。
-
貴金属だけから始める
相場が公開されており、刻印と重さで値段が出ます。
骨董や美術品は価値の幅が大きく、独学では外します。
まず1品目です。
-
売り先を決める
買った品をどこで換金するか。
ここが決まらないと、いくらで買えばいいかも決まりません。
-
媒介の提案に、一行足す
新しく集客をする必要はありません。
いま話をしている売主に、片付けの話が出たときに言えればいい。
値段がつくものは見て、その分を費用から差し引きますと。
最後に、この形が効く理由をもう一度書きます。
片付け業者も、買取業者も、この売主に会うために広告費をかけています。
不動産業者は、その方とすでに何度も会って、信用を作っている段階にいます。
持っていないのは査定の技術だけです。
そこだけを足せば、いまの案件の中で完結します。
新しい集客も、新しい人員も要りません。
買取業界専門家・安場さんの回答
空き家の現場で買い取るのは、出張買取にあたります。
店頭との違いを、安場さんに聞きました。
買取業界専門家・安場さんの回答
出張買取は、店頭買取より利益が出ますか。
買取の方法で儲かる・儲からないが決まることはない、と思ってください。
ただ出張買取は店を構えずに済むので、敷金・保証金などの初期費用や内外装費用なしでできます。
ただし、店頭買取の方がお客様の信頼は高いです。
出張買取は、いろいろな問題を抱えています。
とはいえメリットもあります。
ご自宅に訪問するので、会話の中で、使っていない品物をお譲りいただくケースが多いのです。
ここは法律の観点があります。
依頼された品以外への誘導など、不招請勧誘にあたるものもあります。
法律違反をすると、古物商許可の取り消しなど、いろいろなデメリットがあります。
研修を受けなくてもできますが、古物営業法やほかの法令・事例をしっかり把握しておくことを勧めます。
店頭・出張・催事の費用の違いは、次の記事で比べています。
買取の3つの形を、お金で比べる
店頭・出張・催事。買取の3つの形を、お金で比べる。
詳しく見る →
よくある質問
- 不動産業者が残置物を買い取るには何が必要ですか。
- 宅建業免許とは別に古物商許可が必要です。
管轄の警察署に申請し、手数料は19,000円、審査に約40日かかります。
試験はありません。
法人で取得する場合は役員全員分の身分証明書と誓約書が必要になるため、準備に時間がかかります。
- 古物商許可があれば残置物の処分もできますか。
- できません。
古物商許可は買い受けるための許可です。
家庭から出る家具や家電は一般廃棄物にあたり、自治体の許可を持つ業者に依頼する必要があります。
買取を足すというのは、処分するものの中から買い受けるものを抜き出すという意味で、現在の委託先はそのまま使います。
- 残置物からどれくらいの金額が出ますか。
- 戸建てで1軒あたり3万円から10万円程度が一つの目安です。
壊れた貴金属、止まった時計、仏壇の中の小物、古いカメラ、切手などが中心になります。
骨董や美術品が出れば金額はさらに大きくなりますが、価値の幅が大きく判断が難しいため、最初は貴金属に絞ることをおすすめします。
- 相続物件で買取が効くのはなぜですか。
- 相続人が複数いる場合、誰かが独断で処分すると後から問題になることがあります。
買取をすれば古物営業法の記録義務により品名と金額が書面に残るため、勝手に処分されたという疑いが生まれにくくなります。
相続人が遠方にいる案件ほど、この記録が効きます。
- 売主の家で買い取る場合、注意することはありますか。
- 特定商取引法の訪問購入にあたり、契約書面の交付が必要です。
さらに、転売は禁止ではありませんが、8日以内に手放すと通知の手間と、解除されたときに取り戻せない危険があるため、8日間は手元に置くのが安全です。
資金の面でこの期間を見ておいてください。
家具と家電(持ち運びが簡単なものを除く)は訪問購入の対象外ですが、貴金属やブランド品は対象です。
- 価格交渉に使えるというのはどういう意味ですか。
- 買主からあと10万円下げてほしいと言われ、売主が動けない場面があります。
このとき片付け費用のほうを圧縮できれば、売却価格を下げずに売主の手取りを合わせられます。
残置物に値段をつけられる業者だけができる調整です。
この記事は2026年9月時点の古物営業法、特定商取引法および廃棄物処理法の一般的な取扱いをもとに書いています。金額は当社および提携店の実例による目安で、案件によって変わります。記録の義務と免除は古物営業法第15条・第16条および同法施行規則第16条(e-Gov法令検索、2026年10月8日確認)によります。許可の手続きは管轄の警察署および自治体にご確認ください。