開業タイプ診断(2分)
他業種からの参入

相続で出る動産の評価。家財一式、で済まないものがあります。

相続の実務で、預貯金と不動産は評価の型が決まっています。困るのは動産です。貴金属、時計、骨董。家庭用財産としてまとめられがちですが、金額が大きいと指摘の対象になります。評価の考え方と、換価が要る場面を整理しました。

この記事は士業の方向けです。
税理士、司法書士、行政書士、弁護士など、相続や遺品の実務に関わる方に向けて書いています。

佐藤さん(開業を検討中)相続で出る家財や貴金属は、どう評価すればいいですか?

先に結論安場さん
  • 相続で出る貴金属・時計・骨董などの動産は、相続開始時の時価で評価します。
    売買実例価額や精通者意見価格などから求めます
  • 1個5万円以下のものは一括評価が認められる取扱いがあります
  • ただし貴金属や高額な時計は、まとめずに個別に拾う必要があります
  • 換価が必要な場面では、買取業者の査定書が資料になります

動産で困る場面

動産で困るのは、何があるか、いくらか、どう分けるか、どう換価するかが分からない場面です。
相続の実務で、預貯金と不動産は手順が決まっています。
残高証明を取り、路線価や固定資産税評価額を見る。
迷う余地が少ない領域です。

動産だけが違います。
困る場面は、だいたいこの4つです。

何があるか分からない 相続人が遠方で、実家の中を把握しておられない。
金庫や仏壇の中を確認しないまま申告に進むことがあります。
あとから出てくると、修正が必要になります。
いくらか分からない 金の指輪、古い腕時計、掛け軸。
これらに時価をつける手立てが手元にありません。
結果、家庭用財産としてまとめられがちです。
分け方が決まらない 動産は分割しにくく、相続人の間で揉める材料になります。
金額が分からないと、公平な分け方も決められません。
換価したいが方法が分からない 相続人全員が現金化を希望される場合。
どこに持ち込めば適正な金額になるのかを尋ねられます。

評価の考え方

一般動産の評価は、相続開始時の時価が原則です。
売買実例価額や、精通者意見価格などから求めます。
これらが明らかでない場合は、 同種同規格の新品の小売価額から、経過年数に応じた減価の額を控除して求める方法があります。

実務でよく使われる取扱いが、一括評価です。

扱い内容
一括評価1個または1組の価額が5万円以下のものについては、家庭用財産として一括で評価する取扱いがあります
個別評価5万円を超えるものは、1点ずつ評価します
書画骨董売買実例価額や精通者意見価格を参酌します。
専門家の意見が必要になる領域です
貴金属地金相場が公開されているため、時価が客観的に求められます
貴金属は「分からない」で済まない商材です 金やプラチナは相場が毎日公表されています。
つまり、重量さえ分かれば時価が計算できるということです。
客観的な数字が存在する以上、家財一式にまとめてしまうと、 後から指摘を受けたときに説明が難しくなります。
逆に言えば、重量と品位さえ押さえれば、根拠のある評価が出せます。

まとめてはいけないもの

まとめずに1点ずつ評価したいのは、金・プラチナの製品、ブランド時計、宝石、切手・古銭、書画骨董です。
実務で拾い漏れが起きやすいものを挙げます。
いずれも5万円を超えることが珍しくない品です。

金庫と仏壇は、必ず開けてもらってください 拾い漏れが最も多い2か所です。
仏壇には金の仏具や記念硬貨が入っていることがあり、 手を付けにくいまま処分されるケースが少なくありません。
相続人が遠方の場合、確認そのものが行われないまま進むこともあります。

換価が必要になる場面

換価が必要になるのは、換価分割、納税資金の確保、相続人全員が受け取りを希望しない時、相続放棄の前後の整理の4つです。
評価だけでなく、実際に売却する必要が出る場面です。

このとき、買取業者の査定書が資料になります。
品名、重量、状態、金額が記載されたものです。

買取をすると、法律上の記録が残ります 古物営業法により、買い取った側は 相手の氏名・住所・生年月日・職業を確認し、品名と金額を台帳に記録する義務があります (1万円未満の取引は免除されますが、書籍・ゲームソフト・CD・DVD・バイクの部品などは1万円未満でも必要です)。
つまり、誰が、何を、いくらで手放したかが書面で残るということです。
相続人が複数いる案件では、この記録が 勝手に処分されたという疑いを防ぐ資料になります。

提携先の選び方

提携先は、許可番号を出せるか、査定の内訳を書面で出せるか、買えないと言えるか、訪問購入の手続きを守っているかの4点で選びます。

提携先が店頭で買うのか、出張で買うのか。
形によって、費用と手続きは変わります。
店頭・出張・催事。買取の3つの形を、お金で比べる。

買取業界専門家・安場さんの回答 これまでで、一番損をした買取は何ですか。

やはり、偽物をつかんだことです。
正直、ここでお伝えできないような失敗も多くしました。
損金の額もかなり大きいです。

買取事業で偽物をつかむことは、大きな損失になります。

なお、士業の方ご自身が古物商許可を取得して 買取を行うことも制度上は可能です。
ただし、相続人の代理人としての立場と、買い受ける当事者としての立場が 同じ案件で重なると、利益相反の問題が生じます。

評価の相談を受ける立場と、買い取る立場は分けるほうが安全です。
そのうえで、動産に何があり、どれが5万円を超えるのかを ご自身で判断できるようになっておくことには意味があります。

提携先に丸ごと任せると、 拾い漏れがあっても気づけません。
刻印の読み方と重量からの計算だけでも押さえておけば、 家財一式にまとめてよい案件かどうかを、その場で見分けられます。

よくある質問

相続で貴金属はどう評価しますか。
相続開始時の時価によります。
金やプラチナは地金相場が毎日公表されているため、品位と重量が分かれば時価を客観的に計算できます。
相場という明確な根拠がある以上、家庭用財産として一括でまとめると、後から指摘を受けたときに説明が難しくなります。
家庭用財産として一括で評価できるのはどこまでですか。
1個または1組の価額が5万円以下のものについて、一括で評価する取扱いがあります。
これを超えるものは1点ずつ評価します。
貴金属、ブランド時計、宝石、切手や古銭のまとまりは5万円を超えることが珍しくないため、まとめる前に確認してください。
拾い漏れが起きやすいのはどこですか。
金庫と仏壇です。
仏壇には金の仏具や記念硬貨が入っていることがあり、手を付けにくいまま処分されるケースが少なくありません。
相続人が遠方の場合、確認そのものが行われないまま申告に進むこともあります。
壊れた貴金属や止まった時計にも価値がありますか。
あります。
金やプラチナは形状に関係なく重量で価値が決まるため、切れたネックレスでも評価の対象です。
機械式の時計は、止まっていることが減価の理由になりません。
壊れているから価値がないという判断が、最も多い拾い漏れの原因です。
換価する場合、どんな資料が残りますか。
買取業者の査定書に加え、古物営業法に基づく記録が残ります。
買い取る側には相手の氏名、住所、生年月日、職業を確認し、品名と金額を台帳に記録する義務があるためです(1万円未満の取引は、品目によっては免除されます)。
相続人が複数いる案件では、この記録が勝手に処分されたという疑いを防ぐ資料になります。
士業が自分で古物商許可を取ってもいいですか。
制度上は可能です。
ただし相続人の代理人としての立場と、買い受ける当事者としての立場が同じ案件で重なると利益相反の問題が生じます。
評価の相談を受ける立場と買い取る立場は分けるほうが安全です。
一方で、動産に何があり、どれが5万円を超えるのかを自分で判断できるようになっておくことには意味があります。
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この記事は2026年9月時点の財産評価基本通達および古物営業法の一般的な取扱いをもとに書いています。動産の評価は国税庁の財産評価基本通達128・129・135、確認と記録の義務は古物営業法第15条・第16条(e-Gov法令検索)によります(2026年10月8日確認)。個別の相続における評価および税務の判断は事案によって異なります。実際の申告にあたっては所轄の税務署および専門家にご確認ください。

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